『新明解国語辞典 第六版』アクセント表示について
1.アクセントの山を数字で示す
語のあとに、「雨[1]」「雪[2]」のように数字でその語のアクセントの山(「核」ともいう)の位置を示す。[0]は、「風 [0]」のように、アクセントの山の無い、いわゆる平板なアクセントであることを表わしている。
なお、[2][3][4]……の場合は、いつも最初の拍が低く始まる。例えば、「小春日和[4]」のアクセントの上がり下がりは図示したようなものである。「霞 [0]」のアクセントは、次に助動詞の「だ」が付く場合も平らに続いて、どこにも高から低へ移るところがない。
アクセントが二つ以上ある場合は、「秋風[2][3]」のように並べて示す。また、形態素の切れ目が意識されて、別別にアクセントの山がある場合は、「春一番[1]-[2]」のように示す。また、動詞・形容詞については、終止形と連体形を区別して、この順序に示す。「荒れる[3]:[0]」のように。
なお、アクセントを並べる順序は、わかっていれば若→老の順に、ときに、山の手風→下町風の順に並べ、年齢差も地域差もはっきりしない場合は、やむをえず多数→少数の順に並べた。

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2.見出し語以外にもアクセントを付ける
自立語である限り、親見出しの語も子見出しの語にも、そのすべてにアクセントを付けた。また、語釈の末尾にときに添えられる類義語や言いかえ語も、そのアクセントが他の見出し語に見出されないときには、それにもなるべく付けるようにした。
こうして、この辞書の総項目数は七万六千五百語であるのに対して、アクセントの付いた語ははるかにそれを超えている。
アクセントを付けた一般国語辞書は、他にいくつかあるが、それらは、なぜか、古語をはじめ固有名詞(地名・人名・組織名など)や長い複合用言(例えば「抑え難い」など)にはアクセントを付けない習慣ができつつある。しかし、この辞書では、これらの語にも、他の語と分け隔てなく付けた。固有名詞についてはもちろん、古語にしても、短歌で用いられることがあって、それを東京語ではどう言うか、その情報を期待する向きもあるからである。
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3.東京語のアクセントを採用する
日本語のアクセントは、地域差や年齢差、さらに個人差が大きく、そのすべてを載せることは不可能である。そこで、ここでは一貫して東京のある層のアクセントを採用することにした。
そのアクセントは、現代の東京アクセントの実態を反映させようとしたもので、かくあるべき規範を示したものではない。また、放送のことばとしてふさわしいアクセントの規範意識を表示したものでもない。
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4.年齢差・地域差・個人差を示す
第五版のときもそうだったが、第六版についても、徹底した大調査はできなかった。今回は、二十歳台の若い世代のアクセントを反映させるために、鏑木麗(一九七五生・目黒区)、藤田理子(一九七七生・江戸川区)のふたりに、別別に全巻を見通して、自分のと違うアクセントを抜き出し、それをさらに若くて男性の井口豪(一九七九生・文京区)のアクセントと比較して、一定の作業ルールに従って処理して、現代の若い世代のアクセントとした。
なお、新しく採用された語については、老年層のアクセントを反映させるために、中田信子(一九二四生・新宿区四谷)、中年層として従来からのアクセント提供者沢木幹栄(一九五〇生・江戸川区)、若年層として前述の鏑木麗のアクセントを取りあげた。
そもそも本書のアクセントは、第四版以来、*浅野百合子(一九二〇生・港区)・*竜岡博(一九二二生・品川区)・沢木幹栄・熊谷康雄(一九五五生・新宿区)諸氏のアクセントが土台になっている。さらに、部分的情報は、*鈴木たか(一九二二生・目黒区)・倉持保男(一九三四生・豊島区)・宮岡良成(一九五七生・小金井市)の諸氏からも得ている。(*は故人であることを示す)
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5.アクセントの必要度
東京のなかだけでも、同じ語と見られるものに年齢・地域・個人によるこれほどの違いがある。将来、そのうちのあるものを「標準アクセント」として規範を示すことになるかもしれない。しかし、現在は二通り、三通りあるアクセントのどれで発音しても差し支えないし、ことばを取り違えることもまずないと思う。
アクセントは、 語の骨格を作る重要なバネであるが、そのバネは弾力のあるもので、アクセントが違っていても話が通じないということはないと思う。
[柴田 武]
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付表 1 アクセントの型一覧
アクセントの型の種類は、語または文節の拍数に左右される。一拍語では二種類の型しかないのが五拍語には六種類の型がある。両者の間には a=m+1 (ただし、aはアクセントの型の種類の数、mは拍数)の関係が見られる。
高低を目で見てわかる形に示した。
は、その語につく助詞・助動詞が高に続くことを示し、
は、同じく低に、
は平らに続くことを示す。
表中の語は、仮名遣いによる表記ではなく、音(韻)による表記によった。
|
拍数\アクセント |
[0] |
[1] |
|
1 |

ハ (葉)。 |

キ(木 )。
ア〔感動詞〕。 |
[2] |
|
2 |

エダ(枝)。
イク(行く) |

ミキ(幹)。
クル(
来る)
。 |

ハナ(
花)
。
イク(
行く)
。
|
[3] |
|
3
|

スミレ。
トーイ(
遠い) |

オチバ。
オーイ(多い)。 |

ツツジ。
シロイ(
白い)
。
|

ツボミ。
トーイ(
遠い)
。
|
[4] |
|
4
|

カレエダ。
サッソク |

タンポポ。
ボツボツ〔副詞〕
|

ヒマワリ。
シバラク
|

マツカサ。
ユックリ |

クサカリ。
チカッテ
|
[5]
|
|
5
|

サツマイモ。
シンセンナ
|

チューリップ。
ニジューサン。
|

ゴヨーマツ。
アナタサマ。 |

ヤマザクラ。
ソレダカラ
|

カラスムギ。
ホカナラヌ
|

タケノカワ。
コンニチワ
|
●各語の末尾に付けた句点(。)は、それが文末語の形であることを示し、同じく無印のものは、連体形・連用形または修飾語であることを示す。
●それぞれの例語は、ここに示したアクセント型しか持たないということではない。例えば、クサカリは[4]でもあり、[3]でもある。
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付表 2 名詞に助詞・助動詞が付いた文節のアクセント
|
A 助詞・助動詞の拍数 |
B 助詞・助動詞の種類 |
C 名詞のアクセント |
D 文節のアクセント |
E 文節の例 |
| 1 |
が・に・を・と・で/は・も/か・よ/ね |
制限なし |
D=C |
サツマイモ[0]
→サツマイモガ [0]
、ヤマザクラ[3]
→ヤマザクラモ [3]
、ツツジ[2]
→ツツジヨ[2]
、キョー [1]
→キョーネ[1]
|
| の |
[-1]
|
[0]
|
ハナ(花)[2]=[-1]
→ハナノ [0]
、ツボミ[3]=[-1]
→ツボミノ [0]
|
|
[-1]以外
|
D=C
|
エダ[0]
→エダノ [0]
、カラスムギ[4]
→カラスムギノ [4]
|
| 2 |
ほど/から
|
制限なし
|
D=C
|
ヒマワリ[2]
→ヒマワリホド [2]
、カレエダ[0]
→カレエダカラ[0]
|
より・まで・など/こそ //です
|
[0]
|
[-2]
|
スミレ[0]
→スミレヨリ [4]=[-2]
、ワタクシ[0]
→ワタクシコソ [5]=[-2]
、ハ(葉)[0]
→ハデス [2]=[-2]
|
|
[0]以外
|
D=C
|
タンポポ[1]
→タンポポマデ [1]
、マツカサ[3]
→マツカサコソ[3]
、ミキ [1]
→ミキデス[1]
|
| 3 |
だろう・でしょう・らしい(推定)
|
[0]
|
[-2]
|
エダ[0]
→エダデショー [4]=[-2]
、スミレ[0]
→スミレラシイ [5]=[-2]
|
|
[0]以外
|
D=C
|
オチバ[1]
→オチバダロー [1]
、タケノカワ[5]
→タケノカワラシイ [5]
|
|
ばかり・ぐらい
|
[0]
|
[-3]
|
ハ(葉)[0]
→ハバカリ [2]=[-3]
、サツマイモ[0]
→サツマイモグライ [6]=[-3]
|
|
[0]
以外
|
D=C
|
タネ[1]
→タネバカリ [1]
、タンポポ[1]
→タンポポグライ [1][5]=[-3]
|
●
名詞に助詞や助動詞が付いて文節を作る場合には、「さつま芋[0]
→さつま芋が[0]
」のように、名詞のアクセントが文節の中でもそのまま保たれる、すなわち、単独の語のアクセントと文節のアクセントが一致する場合と、「さつま芋[0]
→さつま芋ぐらい[6]
」のようにアクセントの位置が変わる場合とがある。付表2
はそれを示している。
●
名詞のアクセントと文節のアクセントが異なる後者の場合、2
拍以上の助詞・助動詞においては、文節の中で、助詞・助動詞の冒頭の拍にアクセントが来る。右の「さつま芋ぐらい[6]
」は、実は語末から逆に数えて三拍め([-3])
であり、「ぐらい」 の第一拍に当たる。
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付表3 動詞の活用形・派生形・結合形のアクセント
動詞には、型として平板式(:[0])
と起伏式 (:[-2])
しかない。(
「:[ ]
」は連体形のアクセントであることを示す)
ここでは、拍数や活用の種類(
五段活用・上一段活用など)
による制約はなく、助動詞・助詞の付き方による種別がある。第一は、活用形のまま使われる場合、第二は、活用形に助動詞・助詞が固く結び付いた、派生形の場合、第三は、活用形と助動詞との結びつきが緩い、結合形の場合である。
|
|
|
文法形式\アクセント
|
平板式動詞
|
起伏式動詞
|
語例
|
|
(1)
|
活 用 形
|
連体形
|
[0]
|
[-2]
|
キク(聞く)[0]
、ハナス(話す) [-2]
|
|
(2)
|
終止形/命令形
|
[0][-1]
|
[-2]
|
キク。[0]
、キケ。 [0]
、ハナス。[-2]
、ハナセ[-2]
|
|
(3)
|
派 生 形
|
未然形+(
さ )
せる/連用形+たい
|
[0]
|
[-2]
|
キカセル。[0]
、キカセタイ。 [0]
、ハナサセル。[-2]
、ハナシタイ。 [-2]
|
|
(4)
|
未然形+ない/連用形+て
|
[0]
|
[-3]
|
キカナイ。[0]
、キイテ [0]
、ハナサナイ。[-3]
、ハナシテ [-3]
|
|
(5)
|
未然形+(
よ )
う/連用形+ます
|
[-2]
|
[-2]
|
キコー。[-2]
、キキマス。 [-2]
、ハナソー。[-2]
、ハナシマス。 [-2]
|
|
(6)
|
已然形+ば
|
[-2]
|
[-3]
|
キケバ[-2]
、ハナセバ [-3]
|
|
(7)
|
結 合 形
|
連体形+だろう
|
[-2]
|
[-3]
+[-2]
|
キクダロー。[-2]
、ハナスダロー。 [-3]
+[-2]
(=[-5]
)
|
|
(8)
|
連体形+みたい・そうだ(
伝聞 )
|
[-3]
|
[-3]
+[-2]
|
キクミタイ。[-3]
、ハナスミタイ。 [-3]
+[-2]
(=[-5]
)
|
●限られた語ではあるが、起伏式の複合動詞で連体形が[-2]
でないものがある。例えば、「くつがえる」は[-3]
、「恐れ入る」は[-4]
、「叩き起こす」は[-5]
である。これらの語では、終止形・命令形も[-3]
である。派生形では、連体形のアクセントが保たれる。「くつがえって[2]
」、「恐れ入ります[2]
」、「叩き起こせば[2]
」
●
結合形について、[-3]
+[-2]
(=[-5]
)としたのは、結合形式の[-3]
に起伏式本来の[-2]
をプラスした[-5]
であることを示す。つまり、もとの動詞のアクセントは動かないという意味である。また、平板式で[-3]
とあるのは、三拍の助動詞の第一拍にアクセントが来ることを示す。いずれも、結合形における動詞と助動詞の結び付きが緩いことから来ている。
●「見る」は起伏式であるが、派生形「見て」において、[-3]
になりようがなく、[-2]
にとどまる。「来る」も起伏式であるが、「来て」のキの母音が無声化するために[-2]
にとどまることができず、一つ後へ移って、「来て[-1]
」となる。
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付表4 形容詞の活用形・派生形・結合形のアクセント
形容詞は、動詞と同様、型として平板式([0]
)と起伏式([-2]
)しかない。
動詞と同様、活用形・派生形・結合形に分けて示す。
|
|
文法形式\アクセント
|
平板式形容詞
|
起伏式形容詞
|
語例
|
|
|
ク活用
|
シク活用
|
|
(1)
|
活 用 形
|
連体形/連用形
|
[0]
|
[0]
|
[-2]
|
カタイ(固い)[0]
、カタク [0]
、ヤワラカイ[-2]
、ヤワラカク [-2]
|
|
(2)
|
終止形
|
[0][-1]
|
[0][-1]
|
[-2]
|
カタイ。[0][-1]
、ヤワラカイ。 [-2]
|
|
(3)
|
派 生 形
|
未然形+う
|
[-2]
|
[-2]
|
[-2]
|
カトー[-2]
、ヤワラコー [-2]
|
|
(4)
|
連用形+て
|
[-3]
|
[-4]
|
[-4]
|
カタクテ[-3]
、カナシクテ [-4]
、ヤワラカクテ[-4]
|
|
(5)
|
已然形+ば/
音便形+た
|
[-4]
|
[-5]
|
[-5]
|
カタケレバ[-4]
、カナシケレバ [-5]
、ヤワラカケレバ[-5]
カタカッタ。[-4]
、カナシカッタ。[-5]
、ヤワラカカッタ。 [-5]
|
|
(6)
|
結 合 形
|
連体形+だろう
|
[-2]
|
[-2]
|
[-3]
+[-2]
|
カタイダロー。[-2]
、カナシーダロー。 [-2]
、ヤワラカイダロー。[-5]
|
|
(7)
|
連体形+みたい・そうだ
|
[-3]
|
[-3]
|
[-3]
+[-2]
|
カタイミタイ。[-3]
、カナシーミタイ。 [-3]
、ヤワラカイミタイ。[-5]
|
●
拍数による制約はない。しかし、活用の種類 (
ク活用・シク活用)
による制約はある。
●少数の形容詞に、連体形が[0]
でも[-2]
でもないものがある。例えば、「つまらない」「やり切れない」は、いずれも[-3]
である。連用形も「つまらなく[-3]
」「やり切れなく[-3]」である。
●「良い」は起伏式の形容詞であるが、(4)(5)
においては、語が短いために頭打ちになり、[-4]
→[-3]
、[-5]
→[-4]
のように変わる。
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