15, 助詞の使い方に注意
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「は」と「が」
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「に」と「へ」
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「より」と「から」
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「の」
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「で」
助詞の役割は重要である。とても小さなことばだが、使い方を誤るとニュアンスが変わってしまうので、慎重に用いなければならない。
「は」と「が」
「は」と「が」は何かがちがうと、おそらく多くの人が感じている。けれども、そのちがいはなかなかうまく言い当てられない。これまでにも、専門家の研究がいくつかあった。ここでは、その中から一つを紹介することにする。それは、
は……既知の情報を示す
が……未知の情報を示す
である。
【例】
企画2年、製作期間5年に及んだ大作「港」は完成し、その試写会を行うことになりました。
この例では、映画「港」について何かを読み手は既に知っていると書き手は判断している。これが、はじめての「試写会のお知らせ」なら、つまり、読み手は「港」について何も知らないと書き手が判断しているのなら、「は」は不自然である。
【例】
企画2年、製作期間5年に及んだ大作「港」が完成し、その試写会を行うことになりました。
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「に」と「へ」
一般に、「に」と「へ」には、次のようなちがいがあると言われる。
に……動作の到達点を示す
へ……動作の方向を示す
ところが、ほとんどの場合、「に」と「へ」を入れ換えても、意味は通じる。
【例】
〔1〕大臣がアメリカに(へ)行く。
〔2〕犯人が現場に(へ)立ち戻る。
〔3〕医師が患者に(へ)薬を投与する。
ただ、入れ換えるとニュアンスが変化する。このニュアンスのちがいは、次のように説明されることが多い。
へ……ただ「方向」を表す
に……他のどこ(どれ)でもない「対象」を表す
【例】の〔1〕は、「へ」なら「方向としてのアメリカ」をただ表すだけだが、「に」なら、「イギリスでも中国でもないアメリカ」というニュアンスがこめられることになる。
なお、【例】の〔2〕〔3〕は、動詞の表す意味から考えると、「に」を用いるのがふつうである。「へ」でもよい理由の一つは、このときの動詞が「(広い意味での)移動(とその方向)」を表している点にある。「病院にいる」と言えても「病院へいる」と言えないのは、「いる」がこの「移動」を含んでいないからである。
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「より」と「から」
「より」と「から」は、次のように使い分けたほうがよい。
より……比較を示す
から……起点を示す
「より」は、「会議は3時より始めます」のように、「から」と同じ使い方をすることがある。しかし、「より」は比較、「から」は起点と決めておいたほうが、読みちがいを防げる。
【よくない例】
台風は、沖縄より室戸岬を経由して近畿地方に上陸することが多い。
このままだと「台風は、沖縄を経由するよりも、室戸岬を経由することのほうが多い」と受け取られるかもしれない。「沖縄と室戸岬を経由する」ことを述べたいのなら、次のように書き換える。
【書き換えた例】
台風は、沖縄から室戸岬を経由して近畿地方に上陸することが多い。
【よくない例】
2日より4日は、全商品10パーセント引きです。
「2日に比べて4日は10パーセント引きだ」と受け取る人がいるかもしれないので注意を要する。
【書き換えた例】
2日から4日は、全商品10パーセント引きです。
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「の」
「の」はいろいろな働きをする。それだけに解釈の幅も広がり、場合によっては幾通りもの解釈が可能な文章ができあがってしまう。所有用法以外の「の」は、できるだけ言い換えたほうが無難である。
また、「の」が連続する文は非常に冗漫に感じられる。「の」の連続を避けるために、ことばを補う必要がある。
【例〔1〕】
×総理の公開した資産の内容は、~
○総理が公開した資産の内容は、~
【例〔2〕】
×A氏の本を探している。
○A氏が著した本を探している。
○A氏について書かれた本を探している。
【例〔3〕】
×八百屋の向かいの魚屋の看板の文字~
○八百屋の向かいにある魚屋の看板に描かれた文字~
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「で」
「で」は、動作の行われる場所・手段・原因などを表す。「校庭で遊ぶ」「ペンで書く」「試験で忙しい」などの場合である。
「で」の例には、意味はわからなくはないが、書き手の意図を明瞭(めい‐りょう)に表現できていないものがある。他のことばに置き換えるなどして、的確に表現することに努める。
【例〔1〕】
×停電で停止しない制御装置
○停電しても停止しない制御装置
前者はまちがった表現とはいえない。しかし、「たとえ~しても」というニュアンスを伝える必要があったのならば、後者のように、その部分をはっきり示したほうがよい。
【例〔2〕】
×この建物で、新しい工法が用いられた。
○この建物には、新しい工法が用いられた。
○この建物で、はじめて、新しい工法が用いられた。
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(『ことばの知識百科』三省堂刊より)