ことば百科

日常語の語源

【ま行】

まな板| 満を持す| 微塵| 店| 矛盾| 無尽蔵| 息子| 村八分| 飯| めじろ押し| 面食らう|

まな板 食物を包丁で切るために下に敷く板のこと。「俎」と書くが、正しくは「真魚板」。「真魚」は、食料にする魚のことで、魚を調理するのに用いる板が本来の意で、のち食物全般を包丁で料理するのに用いる厚い板のことをさすようになった。
満(まん)を持(じ)す じゅうぶん準備して待機することをいう。「満」とはじゅうぶんな状態をいい、もとは弓をじゅうぶんに引いて構えていることを「満を持す」といった。語源は中国の『史記』の「越王勾践世家(こう‐せん‐せい‐か)」。中国の春秋時代、越王勾践が呉の国を討とうとして、逆に呉に破れてしまった。敗走しながら勾践が信頼のおける臣下范蠡(はん‐れい)に意見を求めると、范蠡はこう答えた。「満を持するものには天の助けがあります」。勾践は呉王のもとに下り、満を持して時機を待ち、天下を取ったという。
微塵(み‐じん) 極めて細かいこと。また、ある物質が外界の力を受けて、細かい塵(ちり)状に破壊されたもの。仏教から来たことばで、仏教では物質の最小単位を「極微(ごく‐み)」と呼び、この極微の一つを中心にして、上下四方の六方向から極微が結合したものを「微塵」と呼んだ。物理学でいう原子と分子の関係に相当する仏教の物質観である。
商品を常時並べて商売する場所をいう。また、現在では露店や商品を置かずに取引する事務所などもいう。しかし語源的には前者のみをいう。「店」は「見世」とも書き、「見世棚」のこと。鎌倉時代、京の町に定住して、商品を棚に並べて売る商いが生まれた。この棚が「見世棚」。彼らは自分たちの営業所を、市の露店と区別して「店」と呼んだ。これが店の始まりである。
矛盾(む‐じゅん) 二つのものが論理的に整合しないこと。つじつまが合わないこと。語源は中国の『韓非子(かん‐ぴ‐し)』の故事に基づく。楚の国に矛(ほこ)と盾(たて)を売る男がいた。その売り文句は「自分の矛はどんな盾をも破ることができるし、自分の盾はどんな矛をも防ぐことができる」というもの。すると見物人がいわく「お前の矛でお前の盾を突いたらどうなるんだ」と問われ、その男は答えられなかった。
無尽蔵(む‐じん‐ぞう) いくら取ってもなくならないことをいう。もとは仏教のことばで、無限の功徳を有することを、尽きることない宝を納める蔵にたとえたものだが、やがてたとえが本当になり、信者のお布施を蓄えて貧窮者に貸出す金融機関が生まれ、それを「無尽蔵」と呼ぶことになったのが、今の用法の始まり。
息子 夫婦が生んだ子どものうちで男の方を息子という。実際には実子だけでなく養子の場合にもいう。「むすこ」の「むす」は「苔(こけ)むす」などと同じで古代語の「産(む)す」。生まれる、発生する、生えるなどを意味し、勢いよく茂るありさまをいう。すなわち「むすこ」は、古代語で「元気よく育つ子」という,子に対する祝福と激励のことばだった。時が移るとともに、単に子どもをいうようになり、男の子についてのみいうようになった。「娘」もこれと同じで、産す女(め)から来たことば。
村八分 今は単に組織の中で仲間外れにすることをいうが、昔は法律で裁かれるにも等しい村民に対する私的制裁の慣習であった。江戸時代以降、村の掟(おきて)を破った村民と家族に対して、村じゅうの人が申し合せによって付き合いをやめ、のけものにすることが村八分。「八分」とは十の付き合いのうちの八という意味。十の付き合いとは、冠・婚・葬・建築・火事・水害・病気・旅行・出産・年忌の十。村八分ではそのうちの葬と火事を除いた八の付き合いが禁止された。
飯(めし) 米や麦を炊いたもの。ご飯。また食事全般をいう。動詞「召す」の連用形から来たことばで、室町時代、貴族の食事を「召し上がりもの」といった。「食べるもの」の尊敬語である。やがて「召し上がりもの」が略されて「めし」になった。つまりもともとは「食事」そのものをいったことばだったのである。その後「めし」に「飯」の字が当てられて、はじめて米飯だけを「めし」というようになり、さらに「ご」をつけて音読みにした丁寧語「ご飯」なることばも生まれた。
めじろ押し 多くの者が先を争うようにしてその場所に並び合うことをいう。「めじろ」はメジロ科の鳥のメジロ。メジロが木にとまるとき、体をくっつけて押合うように何羽も並ぶ習性をもっている。そのようすをたとえて、子どもの遊戯の一つである押しくらまんじゅうを「めじろ押し」というようになり、さらに意味が転じたもの。
面食らう 突然のことであわてること。栃(とち)の実をつぶしてつくる蕎麦(そ‐ば)に似た食べ物を「栃麺(とち‐めん)」という。これを作るとき麺棒で延ばすが、もたもたしているとすぐ固まってしまう。そこから慌てるようすを「栃麺棒をふるう」といった。それが「栃麺棒をくらう」「めんくらう」に変化した。

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