12, ねじれない
文の構造の基本は、
「何が」+「何だ」
「何が」+「どうする」
という二つの組み合わせにある。「何が」にあたる部分を主部、「何だ(どうする)」にあたる部分を述部という。主部と述部の対応が正しくないと、読み手は首をかしげることになる。
【よくない例】
言語行動の過程のうち概念化作用の特徴は、言語表象に対応する概念をあれこれ操作して、伝達された内容の意味や意図をはっきりさせるので、難しいことばや高遠な内容の話であると、受け手はよくわからなくなる。
「~の特徴は」に、適切に対応する部分がないために、「受け手はよくわからなくなる」。
【書き換えた例】
言語行動の過程のうち概念化作用の特徴は、言語表象に対応する概念をあれこれ操作して、伝達された内容の意味や意図をはっきりさせることである。したがって、難しいことばや高遠な内容の話であると、受け手はよくわからなくなる。
【よくない例】
船乗りロビンソン・クルーソーは難破して、無人島に漂着し、神を信じ、あらん限りの知力を尽くして孤島の孤独な生活を建設し、ついに無事救出されて、主人公の着実な生活設計とその描写によって読者の共感をよび、海洋国イギリスの少年の必読書となっている。
このままだと、「~無事救出されて、主人公の着実な生活設計と~」あたりから、「船乗りロビンソン・クルーソー」の係り先があやふやになってくる。筆者の意図は見当がつくが、読み手に負担をかけてはいけない。文が長くなると、このような「ねじれ」が起こりやすくなる。
【書き換えた例】
船乗りロビンソン・クルーソーは難破して、無人島に漂着する。しかし、神を信じ、あらん限りの知力を尽くして孤島の孤独な生活を建設し、ついに無事救出される。主人公の着実な生活設計とその描写が読者の共感をよび、同書は、海洋国イギリスの少年の必読書となっている。
主部と述部の対応を正しくさせる、いちばんよい方法は、文をできるだけ短く区切ることである。しかし、区切りすぎると、味わいの乏しい文章になってしまう。
【よくない例】
昨日、コンサートに行った。雨が降っていた。靴がだいなしだ。お気に入りの靴だった。気分は音楽どころではないと思った。指揮者が登場した。プレーヤーがかまえた。タクトが振りおろされた。もう靴のことは忘れていた。
【書き換えた例】
昨日、雨のなか、コンサートに行った。お気に入りの靴がだいなしになり、気分は音楽どころではないと思った。指揮者が登場した。プレーヤーがかまえる。タクトが振りおろされたとき、もう靴のことは忘れていた。
(『ことばの知識百科』三省堂刊より)