11, 1つに絞る
書き手の意図がうまく伝わらなかったとしたら、読み手ではなく、書かれた文章に責任があるといってよい。読み直してみると、2つ以上に解釈できる文を書いてしまっていることがある。
【よくない例】
今回の飛行機事故では、遭難者の全員は救助されなかった。
よく見かける例である。2つの解釈ができる。
〔1〕救助された遭難者はいる。
〔2〕救助された遭難者はいない。
正反対に受け取られるような文は、完全に失格である。
【〔1〕で書き換えた例】
今回の飛行機事故では、遭難者の何人かは救助された。
【〔2〕で書き換えた例】
今回の飛行機事故では、遭難者全員、救助されなかった。
【よくない例】
原則として、受付期間は25日までとし、例外は一切認めない。
首をかしげたくなる文である。ふつう、「原則として」で始まると、読み手は例外があることを期待しながら読み進む。ところが、「例外は一切認めない」とあるから、読み手は、はぐらかされ、混乱する。書き手は、「25日をできるだけ守ってください」という気持ちをこめて、書き加えたのかもしれない。しかし、読み手はそこまで斟酌(しん‐しゃく)しない。
例外があるのかないのか、はっきりさせなければならない。
【書き換えた例(例外がない)】
受付期間は25日までとする。これを過ぎた場合には、どんな理由があっても受け付けない。
【書き換えた例(例外がある)】
受付期間は25日までとする。ただし、以下の場合に限って、25日を過ぎても受け付ける。
【よくない例】
この新方式を採用して、生産効率が落ちないようにする。
この「新方式」は、生産効率を落とす可能性があるのだと、書き手は言っているのだろうか。それとも、生産効率を上げると言っているのだろうか。
【書き換えた例(生産効率は落ちる)】
この新方式を採用すると、生産効率は落ちるかもしれないので、善後策を検討する。
【書き換えた例(生産効率は上がる)】
生産効率が落ちないようにするために、この新方式を採用する。
一つの解釈しかできない文をつくるためには、語句を補ったりことばの順序を変えたりする。それでもうまく直せない場合には、思い切って、文の構造を変えてしまうとよい。
文の構造を変えてしまうと、文章の前後の流れがぎくしゃくするかもしれない。しかし、複数の解釈を読み手に与える文を含んでいるよりは、まだよい。
(『ことばの知識百科』三省堂刊より)